クラウドPBXが総務省によって規制された3つのポイントを解説
平成30年9月になって、総務省はクラウドPBXについての規制方針を発表しました。もちろん、クラウドPBX自体が規制されたということではなく、その申し込み手続きや利用についてのルールを明確にしたということです。それだけ多くの企業がクラウドPBXを導入するようになったという証でもあります。本記事では、具体的にどんな規制がなされたのか、その理由と共に、3つのポイントに分けて内容を確認します。そうすることで、ルールに沿った形で申し込みや利用ができるようになります。
総務省がクラウドPBXについての規制を行った理由
総務省が規制方針を増やしたことには、いくつかの理由があります。その一つは転送電話機能の悪用が見られるという点です。特殊詐欺は日本国内において多額の被害をもたらす社会問題ともなっています。こうした詐欺事件では高齢者などに電話をかけて、振込をさせる手口が多いです。ここで問題になっているのが、犯罪者が転送機能を悪用していることです。クラウドPBXはその特性上、東京「03」などの市外局番でどこからでもかけられる仕組みになっています。契約の際に東京の住所で申し込み「03」番号を取得すれば、県外や場合によっては海外にいても同じシステム内にあるスマホを使って相手に「03」番号を通知させることが可能です。そうなると、電話を受けた人は東京からの電話だと誤解してしまいます。この転送機能を使って詐欺行為を働いたり、悪質な勧誘をしたりするケースが生じているのです。
そもそも、電話番号というのは契約者もしくは利用者についてある程度の情報を伝えるものです。上記のように「03」の市外局番からかけてくれば、東京にいる人が発信してきたと分かります。また、「0120」番号からかかってくれば、フリーダイヤルを持つ企業からの電話だと一目で理解できます。従来の固定の電話機を使っていれば、電話回線を契約した場所から電話をかけてきたと推測できるものです。しかし、クラウドPBXが導入されるようになると、地理的な制約が事実上なくなりましたので、こうした理解が通用しなくなってきたのです。もちろん、それ自体は利用者にメリットをもたらすものです。しかし、犯罪者にとっては悪用する手段となってしまっているのが現実です。そのため、総務省ではクラウドPBXの機能悪用を防ぐために規制をすることにしたわけです。
クラウドPBXについての規制の3つのポイント
総務省が定めた規制では、申し込み手続きの厳格化が一つ目のポイントとなっています。まず、取得する市外局番のエリアに利用者の本拠等がなければなりません。「03」番号を申し込むのであれば、オフィスを東京に置いておく必要があるということです。そして、それを確かめるためにも契約者の住所確認と申込者の本人確認などを身分証明書などを使って行うことも定められています。そのため、今ではどのクラウドPBX会社でも申し込み時に公的な身分証明書や、会社の登記簿謄本などの書類を提出するよう求めています。
もう一つの確認手段としてクラウドPBX用のアダプターを設置することとしています。システムの作り方によっては物理的な装置はなくても始められるのですが、機器を特定の場所に置くことで地理的な制約を加えるという意味合いがあります。
2つ目の規制のポイントは、緊急通報には利用できないという点です。具体的には110番や119番、114番の通話中の確認といった番号にはかけられません。クラウドPBXは通常インターネット回線から発信となりますので、位置情報の把握ができなくなるからです。特に外出先のスマホからクラウドPBXを使っている場合などは、利用登録の住所とは全く違う場所にいることが多いため、位置情報の参考になりません。緊急通報を受けた人が位置を誤解してしまう可能性が高くなるため、クラウドPBXでは緊急通報ができなくなっているのです。
3つ目のポイントは申し込み時に審査をすることを求めているという点です。事業者としての実態があり営業活動を実際にしているのかを確認し、詐欺のための利用でないかをチェックします。また、事業者や個人事業者の破産履歴や多額の未払い借金がないかなどを確認します。ただし、この審査はあくまでも悪質な利用者を排除するためのものですので、単に収益性が悪いとか設立間もない個人事業者だといった理由だけで審査に落とされることは少ないです。
ルールを正しく理解してクラウドPBXを利用しよう
クラウドPBXはとても便利なサービスですが、悪質な行為のために悪用された実態もあります。そこで総務省が申し込み手続きの厳格化などのルール徹底を求めています。正しくルールを理解して申し込み、利用するようにしましょう。